私の子供は大学生、都内で一人暮らしをしております。彼のアパートには、いわゆる訪問営業が頻繁に来るそうなんですが、ご参考までに、その中の怪しい一例をご紹介しましょう。
ある晩、子供から私宛てに、 LINEで相談がありました。なにやら書類のようなものの写真が添付されています。
彼のアパートの郵便ポストに、イッツコムという会社から、
「重要 全世帯が対象となりますのでご協力ください。」
「ひかり改修工事のお知らせ」
「ひかり改修工事のお知らせ」
というチラシがポストに入っていたそうなんです。
イッツコム(イッツコミュニケーションズ)社は、 東急グループ系のケーブルテレビ会社。資本金52億円超、 従業員数664名、そこそこ大きな会社です。事業内容は、ケーブルテレビの他に、インターネット回線、電話、 データSIM、電気やガスなど、幅広く取り扱っているようです。
そのチラシの宛先名の欄には、
「アパート名」と「102号室」入居者様、
と記載されていますが、こちらの正確な氏名の記載はありません。
それと同じ内容のチラシが、 アパート建屋の出入口の壁にも掲示されていて、アパート全世帯が対象であることを入居者にアピールしています。
チラシと言っても、A4用紙が3枚、 透明のビニール封筒にしっかり封入されていて、なかなか丁寧な印象です。
チラシ3枚の構成は、
①ひかり改修工事のお知らせ(工事日程と工事内容の概要)
②工事日程回答用の記入用紙
③宅内作業内容について(工事内容に関する写真入り説明)
資料①「イッツコムひかり改修工事のお知らせ」によると、要は「イッツコム社のひかり回線工事のため、 各部屋内のテレビ端子と分波器の確認」をしたいとのこと。もし確認して、必要があれば部品交換をすることになるが、 入居者の費用負担は一切ありません、との記載があります。
資料②には、工事予定日が3日間指定されており、その下には、「工事予定の3日間のうち、ご都合の良い日と時間帯を連絡してください。」 と回答期限の記載があります。回答方法は、 この回答用紙による用紙回収の他にも、電話、FAX、Eメールでも可能で、 わざわざ、この用紙を回収するために〇月〇日に伺います、 との記載もありました。
資料③「宅内作業内容について」の説明によると、点検内容としては、「 壁面テレビ端子の確認および交換作業」とあります。ご丁寧に写真入りです。各部屋の壁にあるテレビ端子を確認し、 もし必要であれば端子部品を交換したい。 もし交換しないとテレビが観られなくなる可能性も、薄っすら匂わせる内容 になっております。
ただ、長年に渡って転勤族をしている私の経験上で、ひかり回線の改修工事のために、 居室の「テレビ端子の交換」なんて聞いたことがありません!
案の定です。
いくつか出てきます。
『点検商法』
なんとなく聞いたことはありましたが、 ここまで手が込んでいるとは知りませんでした。
不必要な無償の点検作業と称して、まず部屋に上がり込み、 点検作業は格好だけで、そのまま居座り、 点検には関係が無い商品やサービスの売り込みや契約の切り替 えを仕掛けてくるんだそうです。
その営業マンにもよりますが、 悪質な場合は、 長時間にわたり居座られ、根負けして、 無理やり契約させられてしまうケースもあるようですよ。
テレビ端子を点検するところまでは無償ですし、居住者自身が、 訪問日時を指定して、書面で入室を承諾していますから、 そこまでは合法。
しかし、点検と偽って、売り込み活動はダメでしょう!?
と思いきや、
資料①の「2、各戸内作業」の項目をよく見てみると、
「案内内容:インターネットサービス・固定電話サービス・ 多チャンネルサービスの他にインテリジェントホーム、 東急でんき&ガス、イッツコムSIM等のご案内」 としっかり記載があるではありませんか!
「売り込みします」とは明言していませんが、「別のサービスの案内」は、 各部屋内での「作業」に含まれているという、まさに用意周到な戦略。 さすが、東急グループだけのことはあって、 法に抵触するようなことはしません。
したがって、部屋の中に入れてしまったその後は、断るのも、 契約するのも、入居者次第。
イッツコム社のウェブサイトにも、この件に関連するお知らせがありました。ただし、イッツコムの契約者を対象とした通知のようです。何か揉めたときには、勘違いでした、と言い逃れするためでしょうか。
アパート管理会社の若いスタッフさん(以後、「ス」)が電話応対してくれました。
私:「イッツコムという会社から、 部屋の中のテレビ端子の点検工事のお知らせが来たんですが、 これって必要な工事ですか?」
ス:「少々お待ちください。」
(まだ慣れていない雰囲気で、他の先輩社員に確認した様子。)
ス:「もしもし、オーナー様も了解されている点検のようでして、 もしよろしければ、ご協力お願いします。」
なんと?!意外なことに、 管理会社もオーナーも知っているようです。
でも「よろしければ、ご協力・・」という言葉が、妙に引っ掛かりました。
私:「でも、うちの部屋はケーブルテレビも契約してないのに、 テレビ端子の点検なんて、普通は要らないですよねぇ?」
ス:「ああ、そうですね。でも、もしご都合がよろしければ、 ご協力お願いしますぅ。」
これは何か怪しいぞ、と思ったので、ハッキリと聞き返しました。
私:「この点検工事は、管理会社さんによる、 アパート全室対象の必要な工事なんですか? この工事は断れないものなんですか?」
ス:「いや、全然、そういうものではないです。ご都合が悪ければ、やらなくても大丈夫ですよ。」
私:「あぁ、、そういうことですねぇ。わかりました。 ありがとうございます!」
イッツコム社は、入居者に対して書面で事前通知し、 入室の承諾も得た上での営業活動をしています。 アパート管理会社としては、 入居者とイッツコムの間の個別契約については、 一切関係ございません。というスタンスなんでしょう。
私から子供には、経緯詳細を説明し、 工事予定日の回答は不要であることと、 再度イッツコム社の営業が来ても、相手にせず、 部屋には絶対上げないよう言い含めておきました。
後日、子供から聞いたところ、工事予定日には、 居室ドアをノックする訪問者があったそうですが、 居留守で放置したそうです。
そして、案の定、工事予定日の後には、またチラシが入っていて、
「102号室入居者様、工事に伺いましたが、ご不在でしたので、 工事ができませんでした。再度、工事予定日について、 下記へお電話ください。」
と、 うっすら罪悪感を煽る督促フォローアップもされていたそうです。
もちろん、こちらも放置スルーです。
「点検商法」で、いろいろとネット検索しましたが、 他にもたくさん出てきます。
とにかく人間心理をうまく利用した営業スキームです。
大学進学と同時に、親元を離れ、一人暮しを始めるお子さんは、 経験も少なく、変な輩に部屋の中に入られて、売り込みを掛けられたら。。。
毅然とした、 正しい判断ができるでしょうか?
たとえ大人であっても、 相手次第では、押し切られてしまうかもしれません。
成人年齢が18歳に下がったことで、 きっと良いターゲットにされていますので、十分ご注意ください。
ひとり暮らしは御用心です。